経済環境
欧米の景気後退から世界経済の成長率は2023年度に2%割れを見込んだ減速が見込まれるものの、日本の実質GDP期待成長率は、2023年度は+1.1%、2024年度+1.2%と安定した成長を維持する見通し。一方、東京都の雇用環境は全国をやや上回るペースでの改善が継続。2022年第3四半期の東京都の失業率は、前年同期から0.6pp 低下の2.5%、就業者数は同9.1万人増の831.9万人。22年9月末の産業別雇用者数(原数値)をみると、製造業は2019年平均対比からは29万人減少、情報通信業は前年同期から11.6%増、コロナ前の2019年平均対比では25.4%増となる95.4万人となった。しかし、情報通信業では増員ペースに見合ったオフィス需要の顕在化は確認されていない。
需給
都心5区グレードAオフィスの新規竣工がなかった2022年第4四半期の空室率はほぼ足踏み状態となり、前年同期比3bps低下となる3.4%、先行指標となる募集面積率も同11bps低下の6.3%となった。
業種別動向をみると、ネット・ベースでの移転面積は、通年で全ての業種がマイナスにとどまった(次ページ右中グラフ参照)。テレワーク導入を理由とする減床は、前年に約4千坪、今期約2千坪の更なる減床が報じられたKDDIなどに代表されるTMT1が引き続き主体となっているが、金融サービス業など幅広い業種でも確認されている。一方、製造業では、コロナ禍に伴う就業者数減少にも関わらず、業績が比較的好調だった半導体企業などの拡張移転が確認され、通年での移転面積の純減も限定的であった 。 2020年央以降継続している賃料下落はテナントの移転需要を喚起、年間成約面積もコロナ前の水準に回復しつつある。そして、報告された移転取引における大規模ビルの比率も上昇傾向にあり、質の高いビルに割安な賃料で移転する傾向は着実に強まっている。
賃料
2022年第4四半期の都心5区グレードAオフィス全体の平均想定成約賃料は前年同期比1.3%減少し34,552円と、引き続き下落傾向。前年同期比2.5%の下落となった前期と比較すると下落幅は縮小した。しかし、想定成約賃料の下落幅は募集賃料の下落幅(同マイナス1.0%)を上回っており、借り手市場の様相が強まっていることがわかる。
2019年末以降の賃料動向を総括すると、グレードAオフィスを中心にグレードの高いビルでの賃料調整が進展してきたことから、グレードが低いビルでの賃料下落が拡大方向にある(次ページ右下グラフ参照)。