経済環境
グローバルな供給制約の影響、原材料コストの上昇に伴う価格転嫁などから一部に足踏みは見られるものの、コロナ後を見据えた日本経済の回復基調は継続している。そして、日本の雇用全体は、依然として弱含みで推移しているものの、東京都心オフィス・ワーカーの伸びは総じて堅調である。21年第4四半期の東京都の就業者数は前年同期から9.5万人増加、失業率は同0.6ppの低下に転じ、2.4%となった。産業別では情報通信が9万人増と就業者数増加を力強く牽引している。22年第1四半期の日本の失業率は同0.1pp減の 2.7 %。東京都の所在する南関東の失業率も同0.1pp減の 2.9 %と改善傾向。3月末の産業別雇用者数(原数値)では、情報通信業は前年同期から10万人増加、コロナ前の2019年同期からも37万人増加。また専門サービスも前年同期から9万増、2019年同期から25万人増加。一方、卸売業・小売業では、2019年同期からも20万人減少。回復途上にある製造業も、2019年同期からは20万人減少している。業種別の雇用の回復度合いは、まだら模様となっている。
需給
エリア別の強弱はあるものの、年内の新規供給が限られている中、オフィス需要は復調の兆しが見られ始めている。都心5区グレードAオフィスの空室率は前年同期比1.6pp上昇し3.0%となったが、前四半期からは0.7pp減少した。サブマーケット別にみると、引き続き新橋・汐留エリアの空室率が最も高く、前年同期比16.7pp増の17.5%と高止まりしているものの、前四半期の19.3%からは小幅に減少した。ビルオーナーによっては、足元の賃料減額の幅を絞り始める動きも見られ、今後はエリア空室率の高止まりも予想される。また、新型コロナウイルス感染症の拡大以降は、外資系企業の減床の影響も受け、空室が目立っていた六本木エリアの空室率は、六本木ティーキューブや東京ミッドタウン・タワーへ短期を含む大型入居があった事などから、前年同期比1.6pp減の3.5%となり、前四半期の6.1%から大きく改善した。渋谷エリアの空室率は、前年同期から0.5pp減少し、全てのグレードAビルでほば満室稼働となった。TMT(テクノロジー、メディア、テレコム)が集積する同エリアでは、コロナ禍でいち早く空室が増加し、2020年第2四半期に1.5%をつけたものの、極めて低い空室率を維持している。
経済環境の不確実性が高まる中で、質の高い新築ビルを求めるテナントの潜在需要は大きい。2022年7月竣工予定の九段会館テラス(飯田橋・九段エリア)は約8割が内定しており、2022年竣工ビルの内定率は約48.7%と回復基調にある。大量供給が予定されている2023年の新規供給物件においては、現時点で内定率は約27.5%である。
賃料
都心5区グレードAオフィス全体の平均想定成約賃料は前年同期比4.8%減少し34,678円となったが、大型ビルを中心に、賃料減額の傾向が強まっている。空室が目立つ大型ビルが重ねて前年同期から15%以上値下げした事を始め、エリア別にみると、浜松町・御成門エリアの賃料は、前年同期比9.3%減の29,724円となった。また、品川港南口エリアでも複数のビルが前年同期から10%以上の値下げを実施したことにより、同エリアの賃料は前年同期比7.9%減の28,541円となった。これはコロナ前と比較すると15.4%下落に相当する。一方、2021年第3四半期まで前年同期比マイナス5-6%水準で推移していた六本木エリアの賃料マイナス幅は縮小し、賃料は前四半期比3.3%減の35,798円と都心5区平均を上回る水準に戻りつつある。