コワーキングスペース前年比2倍
2017年アジア太平洋地域
コワーキングスペースがビルの付加価値に貢献
東京、2018年3月15日 – 不動産総合サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(日本本社:千代田区永田町)の発行した最新レポート「アジア太平洋地域コワーキング動向 ― 今やビジネスソリューション」によると、2017年のアジア太平洋(APAC)地域におけるコワーキングスペースの賃貸借面積は2016年に比べて倍増したことが報告されました。過去2年で8百万スクエアフィートが新たに契約されたことからも、コワーキングがAPAC地域を席巻しているといえるでしょう。会員数は世界平均の40%[1]を上回る伸びを見せ、コワーキング業者がAPAC地域の重要な需要触媒を成してきているといえます。
過去12か月において法人の会員数[2]は2倍以上の増加を見せる一方、フリーランスや起業家の会員割合は過去3年で約15%減少しました。これは、柔軟性、軽微な内装費、コラボレーションやネットワーキング機会の増加をもたらすコワーキングのコンセプトが企業の不動産戦略に浸透してきた結果といえます。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド、アジア太平洋グローバルオキュパイヤーサービス部門責任者、クリス・ブラウンは次のように分析しています。「コワーキングはIT系やベンチャーへの依存から脱却し、むしろ企業不動産戦略の柱としてポジションを確立しようとしています。法人テナントの多くは確かに、コワーキングスペースを賃借候補としてではなく今やビジネスソリューションとして捉えています。同地域において今後2年に渡り賃料上昇が見込まれる中、経費節減の観点からも柔軟な職場環境を不動産ポートフォリオに組み込んでいくことが要求されていくでしょう。」
APAC地域では、オフィスビルの貸主が独自で或いは業者とパートナーを組んでコワーキングスペースを自らのビルに取り込んでいます。賃料の高い香港では一人分のデスクスペース費用がコワーキング形態では従来の半分で済むためコワーキングが合理的といえます。一例として香港では英系スワイヤーパシフィックが、創設したIT系ベンチャー子会社のブループリントをコワーキングに業態転換し、自社グループの大規模オフィスコンプレックス、タイクープレイスで3万スクエアフィートを提供しています。今や新たなオフィス開発では必ずと言ってよいほどコワーキングが供えられ、シンガポールにおいてもWeWorkがFunan IT Mall跡地の再開発で8か所目となる4万スクエアフィートを契約するなど、その傾向が強く見てとれます。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド、アジア太平洋リサーチ部門マネージング・ディレクター、シグリッド・ジアルシタは次のように洞察しています。「コワーキングスペースは、投資家やビルの貸主から戦略的に必要不可欠なものとして捉えられるようになってきています。ビルの付加価値向上や資産のリポジショニングを行う上でその価値が見出されているからです。コワーキングスペースがビルのアイデンティティーの一翼を担っていると言えるかもしれません。」
| 2017年コワーキング主要賃貸借事例(APAC地域) | |||
| コワーキング業者 | ロケーション | 都市 | 面積 (sf) | 
| WeWork | China Overseas International Center | Shanghai | 290,630 | 
| WeWork | Seoul Square | Seoul | 192,150 | 
| RedBrick | Phoenix Block II & III | Hyderabad | 150,000 | 
| WeWork | HP Building | Seoul | 133,000 | 
| Chirk up Coworking | The Place | Guangzhou | 107,650 | 
| Table Space | Western Aqua | Hyderabad | 100,000 | 
| Awfis | Salarpuria Supreme | Bengaluru | 78,000 | 
| WeWork | LKF Tower | Hong Kong | 60,000 | 
アジアのコワーキングプレイヤーは2017年に5億5千万米ドルの資金調達に成功したと試算されています。2016年の2億7千万米ドルと比較しても大幅な増額です。UcommuneやAwfisといった起業して間もないコワーキング業者はこれらの潤沢な資金や買収を梃子に、野心的にAPAC地域での基盤拡大を狙っています。東南アジアに限ればニーズに合う規模や場所が限定的であるため、残念ながら現時点ではコワーキングが浸透しているとはいえませんが、この傾向は長くは続かないでしょう。現在の急激な成長動向を見る限り、今後3~5年間でAPAC地域でのコワーキングスペースは倍増すると予測されます。
※レポート原文「アジア太平洋地域コワーキング動向 ― 今やビジネスソリューション」はこちら External Link
[1] 2017年Global Coworking Survey, deskmag
[2] 従業員500人超を抱える企業
