米大統領選の一般投票では投票総数が過去最多となり大接戦を繰り広げています。郵便投票の利用拡大で開票作業が遅れ、勝者確定はずれ込んでおり注目が集まっています。トランプ氏とバイデン氏による不動産市場への政策について考えます。
主な政策
バイデン氏は大企業及び富裕層に対し10年間で3兆ドルの増税を見込んでいます。その増税分を国内の製造業や環境インフラへ投資する事により雇用拡大に振り向けます。トランプ氏は主に大幅な減税と規制緩和により10か月で1000万人の雇用を創出するとしています。米GDP4-6月期はCOVID-19の影響を受け前期比年率マイナス31.4%を記録しましたが、7-9月期は同33.1%の増加と過去最高の成長を示し、失業率もピーク時より減少しています。
不動産に関る税制
トランプ氏は、不動産物件売却時のキャピタルゲインを180日以内に同種の不動産へ投資する事により、キャピタルゲイン税の繰り延べを可能とする1031エクスチェンジを維持していますが、バイデン氏はこれを廃止するとしています。またバイデン氏は賃貸所得の損失ルールでの免除を減らすことも検討しており、明確な提案はないものの繰り延べ利息を報酬として課税する事を示唆しています。
住宅ローン政策
トランプ氏は政府系住宅金融機関であるファニーメイとフレディマックについて、民営化に向けて検討しています。2社は2008年金融危機による市場崩壊で政府が救済し管理下に置いています。ファニーメイ及びフレディマックは金融機関から住宅ローン債権を買い入れ、保証を付けて証券化し民間投資家に販売しています。これにより消費者はデフォルトリスクから守られ、30年固定金利住宅ローンの様な長期貸し出しが可能となりました。民営化後も政府による支援は継続されるものの、政府の関与を引き下げ住宅ローン市場に競争を促す事を目的としています。一方、バイデン氏はファニーメイとフレディマックを存続させる公算が大きく、中低所得者向け住宅ローンを充実させる事により、長期低迷する持ち家率の上昇を狙います。しかし上限がある為100万ドル以上の高級住宅等にとってはメリットがほぼ無く物件価格下落に繋がりかねない事も懸念されています。
まとめ
トランプ氏は不動産市場において税制優遇措置等により投資の機会を拡大してきました。バイデン氏が選ばれればこうした優遇制度は見直される可能性がある一方で、この財源が低所得者や中間層向け不動産マーケットへ流れ安定した不動産投資市場が期待されます。両者共にインフラ投資にも意欲的であり、どちらが当選しても不動産マーケットは継続して恩恵を受けられる事が考えられます。