2011年、政府は国際的な商業競争力の向上を目指し、全国の主要都市において市街地再開発を促進する特区を制定しました。港町福岡では、市の中心部で現在2つの開発プロジェクトが進行しています。
天神ビッグバン
国際戦略特区の認定を受け、福岡市は2015年に「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発プロジェクトを開始しました。同プロジェクトでは、天神駅交差点から半径500メートル、約80ヘクタールのエリアが対象となっています。エリア内では、ビルの高さ制限や容積率が緩和され、これにより高さ100メートル前後の超高層ビルの建設が可能となりました。市は、緩和策の期限である2024年までに30棟の老朽化したビルの建て替えを目指しており、オフィス延床を313,000㎡増床、2.4倍雇用の引き上げを期待しています。全ての建て替えが完了すると、毎年8,500億円の経済波及効果が見込まれています。目玉の一つは旧大名小学校跡地の再開発であり、オフィスの他、ラグジュアリーホテルのザ・リッツ・カールトン、MICE施設や商業施設で構成される予定となっています。
博多コネクティッド
「博多コネクティッド」は2019年5月に開始された再開発プロジェクトで、博多駅を中心とした半径500メートルの範囲において、容積率などの規制緩和が設けられています。2011年の九州新幹線開通以来、博多駅周辺の重要性は高まっており、これまでにもJR博多シティやキッテ博多などの商業施設が開業しています。福岡市は、2019年のプロジェクト始動から10年で20棟の老朽化したビルの建て替えると発表しています。JR博多シティは更に南側へ拡張し、オフィス、ホテル、商業施設を含むビルが建設される予定です。博多コネクティッドでは、駅周辺の歩行者通路のネットワークについても整備を行い、九州のゲートウェイおよびインバウンド観光の目的地としての強化を目指しています。
福岡のその他の開発プロジェクト
福岡は現代的な港町へと変貌しています。2つの再開発エリアに加え、オリンピック後の観光機会に備えるために、福岡では他にも多数開発プロジェクトが進行しています。
交通網の改善
最も注目される開発プロジェクトとしては、福岡地下鉄七隈線の延伸計画が挙げられるでしょう。現在の七隈線の終点である天神南駅から博多駅までを結ぶ計画で、これにより天神と博多の間を結ぶ第2の鉄道路線が誕生します。訪日外国人旅行者にも人気が高い商業施設キャナルシティ博多は、現在近くに駅がありませんが、同施設にも途中停車する予定となっており、利便性の向上が期待されます。また、2022年に延伸工事が完了すれば、福岡市西区から博多駅までが直通でつながり、長距離列車へのアクセスも向上する予定です。
同じ2022年には、九州新幹線の西九州ルートが新たに開通し、博多駅から長崎駅までの143㎞がつながります。長崎はクルーズ観光でも人気があり、2019年にはクルーズ船寄港回数第4位となっています。2都市の移動時間は82分となり、既存ルートより26分の短縮となります。また、同ルートの開通により、九州における福岡の観光拠点としての重要性が強化されるでしょう。
また、福岡空港への道路アクセスも強化されます。環状線と空港を結ぶ福岡高速3号空港線が、空港入り口まで2㎞延伸され、これにより3号線交差点の渋滞が緩和される見込みです。また車の所要時間も5~10分ほど短縮されます。
周辺地域の開発プロジェクト
未来の職住環境の展望から、福岡市は博多湾エリアにおいて2つのプロジェクトを計画しています。アイランドシティは、1994年に始まった401.3ヘクタールの埋め立て地におけるニュータウン計画で、コンテナ港の他、研究、創業、商業および環境に優しい住居などの関連施設が含まれています。2020年3月には、7.5ヘクタールの区画にホテル、MICE施設、商業施設、劇場で構成される複合施設「アイランド アイ」が開業しました。福岡市は、同施設の開業を機に市の中心部からアイランドシティへ観光客を誘致したい考えです。
箱崎地区では、「福岡スマートイースト」というスマートシティの開発構想が持ち上がっています。場所は九州大学の旧箱崎キャンパス跡地で、約50ヘクタールの敷地が、自動運転車やドローンによる配達サービスなど、IoTインフラが整う実験的な街に変貌する計画となっています。同プロジェクトは、高齢化する日本に順応するモデルケースとして期待されています。事業者の公募が2020年以降に始まる予定です。
